
月間約4,500万MUBの動画配信サービス「TVer」では、現在、広告配信システムの内製化に取り組んでいます。これまで外部のシステムを活用してきた広告配信の基盤を自社で担うことで、データ活用の幅を広げながら、ユーザーにとって使いやすいプロダクトの開発を進めています。
そこでカギになるのが、ビジネスと開発の連携です。
プロダクトマネージャー(以下、PdM)が、広告代理店や放送局などのユーザーと向き合う営業チームの声を受け、データサイエンティストが分析を通じて判断材料を示し、エンジニアと連携しながら形にしていく。「事業の成長にどうつなげるか」を職種を越えて一緒に考えることで、新しい広告商品の開発などの成果が生まれています。
今回は、PdMの牧紗理菜さんとデータサイエンティストの川井智謙さんに、広告配信システムの内製化にどう携わっているのか、そしてビジネスサイドと開発サイドが同じ目線でプロダクトづくりを進める、TVerの開発環境について話を聞きました。
プロフィール・牧 紗理菜(マキ サリナ)
新卒入社した企業でウェブメディアやモバイルアプリのマネタイズ支援業務に従事後、toCアプリ開発のPM業務を経て、2025年に現在の株式会社TVerに入社。自社広告プロダクトのPMとしてニーズ収集やプロダクト改善を担うほか、現在は配信システムの内製化・立ち上げプロジェクトに参画。並行して、BtoBマーケティング領域におけるサービスサイト改善やイベント企画など、業界内でのプレゼンス向上にも広く携わる。
プロフィール・川井 智謙(カワイ トモノリ)
香料メーカーでの研究開発を経てデータサイエンティストへキャリア転換。医療や保険、Web広告領域でのデータ分析を経て2023年に現在の株式会社TVerに入社。広告データチームを統括し、現在はデータサイエンスとデータエンジニアリングの両面で自ら手を動かしながら、各チームと連携して広告商品の改善や事業成長の推進に尽力している。
川井さん:
私は広告プロダクト本部で、データサイエンティスト兼データエンジニアとして、広告効果測定や配信最適化のモデル開発、分析基盤の構築・運用などを担当しています。
前職でアドネットワークに関わるなかで、広告の領域は扱うデータ量が多く、配信結果やユーザーの反応も短いサイクルで見えくる面白さがあると感じていました。分析した結果を次の改善や提案に生かしやすいことも、この領域に惹かれた理由です。
そのなかでもTVerは、テレビとデジタル広告が交わる珍しいポジションにあります。テレビ番組という多くの人に届くコンテンツを扱いながら、広告配信や効果測定のデータを自社で活用できます。当時、そうしたデータの活用がこれから進んでいくという段階だったので、過去の経験を生かしながら仕組みを構築できることに魅力を感じて入社しました。

牧さん:
私は2025年にTVerへ入社し、広告プロダクトのPdMを担当しています。広告プロダクトの企画部門と広告事業本部のセールス推進部を兼務しているのですが、営業チームから寄せられる要望をもとに必要な機能や改善について整理し、開発チームと連携しながらプロダクトへ落とし込んでいく役割を担っています。
前職までは、Webメディアやモバイルアプリのマネタイズ支援、toCアプリのPM業務などに携わっていました。TVerは一人のユーザーとして好きなサービスでもあり、これまで経験してきた広告やマネタイズ、プロダクト開発の知見を生かせる環境だと思い、入社を決めました。
川井さん:
TVerで番組を視聴すると、番組の前後や途中に動画広告が流れます。その広告の配信は、これまで外部のシステムを活用して運用されていました。現在進めているのは、その配信システムを自社で内製化するプロジェクトです。
背景には、広告配信に関するデータを自社でより活用しやすくしたいという狙いがあります。内製化することで、施策を講じるスピードを上げたり、より詳細な分析につなげたりできるようになります。
牧さん:
この広告配信システムは、主に広告代理店や放送局の方々が、TVer上に配信する広告を入稿したり、配信条件を設定したりするために使うものです。
従来のシステムを使っていた方々に、内製化した新しいシステムへ切り替えてもらうことになるので、操作感が大きく変わりすぎると負担になってしまいます。一方で、既存の使い勝手を踏襲するだけでは、自社プロダクトとして内製化する意味がありません。
これまでの利用体験をできるだけ保ちながら、TVerならではの新しい価値をどう加えていくか。その両立を考えるところに、難しさと面白さがあると感じていますね。
また、内製化によって、新たな広告メニューの開発をこれまで以上に柔軟かつスピーディーに進められるようになりました。既存の仕組みを移行するだけでなく、新しい商品をゼロから作れる土台ができるという意味で、内製化はとても大きな意味を持っていると感じています。

牧さん:
たとえば、営業のメンバーから「TVerにはこういう視聴傾向の人がいるのではないか」「その層に向けた広告メニューを作れるのではないか」といったアイデアが出ることがあります。そのときに、実際にそうした視聴傾向があるのかなど、データサイエンティストの方々にデータで確認してもらっています。
川井さん:
定期的なミーティングもありますし、Slack上で日常的に依頼や相談が飛び交っています。ビジネス側から上がってくる仮説に対してこちらで分析をして、配信できる対象者数、つまりどれくらいの方々に広告を届けられそうかという規模感や、広告商品として成り立つ見込みがあるかを確認して返すことが多いですね。
一方で、データチーム側から提案することもあります。TVerではファーストパーティデータとして、視聴者の年齢や性別、居住地、興味関心などのデータを持っています。そこに視聴行動を掛け合わせることで、たとえば「深夜アニメをよく見る人」や「特定のジャンルのバラエティ番組をよく見る人」といったセグメントを見つけることができます。
牧さん:
その提案をもとに、営業メンバーなどとニーズを確認しながら、広告メニューとして商品化できるかを検討することもあります。
川井さん:
そうですね。もちろん依頼を受けて分析するケースが多いですが、それだけではありません。データを見ているからこそ、「こういう切り口には価値があるのではないか」と気づけることがあります。そうした提案をボトムアップで出せるのは、TVerの特徴だと思います。
経営層との距離も近く、営業やPdMとも日常的にやりとりしながら仕事を進めています。そのためデータを出して終わりではなく、その分析をもとに広告商品やプロダクトの方向性をすぐに議論できます。
自分の分析が意思決定につながる場面も多く、事業を動かしている感覚があります。そのぶん、結果に対する責任も感じますね。
牧さん:
前職までは開発チームとビジネス側のチームが組織として分かれていることが多く、何かを進めるにも事前の調整や準備が欠かせませんでした。
その点、TVerではデータチームもエンジニアも同じテーブルにいるように感じています。アイデアがあったら気軽に相談できますし、どのデータを見れば判断できるのか、どういう指標で示せばよいのかといった裏付けの部分から一緒に考えてもらえます。物事が進むスピードがまったく違います。

牧さん:
TVerは職種を問わず、それぞれのメンバーが同じ目線で同じものに向かって動けている印象があります。これまでの経験では、チームごとに追っているミッションが異なることも多く、横の連携を図る難しさを感じる場面もありました。
でもTVerでは、職種や部門が違っても、本当に混ざり合っている感覚があります。これは広告チームだけでなく、視聴者向けサービスを担うチームや会社を支えるコーポレート部門も含めて、会社全体のカルチャーとして目線が揃っていると感じます。
川井さん:
営業の数字や事業KPIが、エンジニアやデータサイエンティストにも共有されていることが大きいと思います。今期の売上がどう動いていて、会社として何を目指しているのかが見えるので、自分たちの分析や開発がどの数字に貢献するのかを意識しやすいんです。
だからこそ、データチーム側からも「この分析をすれば、広告商品の改善につながるのではないか」「こういう提案が、売上やKPIに効くのではないか」と考えやすい。事業の状態が広く可視化されていることが、目線の一致につながっているのだと思います。
川井さん:
データサイエンティストは、放っておくと自分が面白いと思う分析ばかりしてしまうところがあります。そこにPdMの方々が、事業の視点を持ち込んでくれる。こういう視点で分析してほしい、こういう意思決定に使いたいという方向づけをしてくれるので、私たちの分析が独りよがりにならないんです。とてもありがたい存在ですね。

牧さん:
データサイエンティストの皆さんの存在は、本当に心強いです。私はビジネス側の経験が長いので、アイデアを出すときに、どうしてもビジネス側の視点に寄ることがあります。
そんなときに、データサイエンティストの方々が「データ上はこう見えています」と示してくれるので、冷静に判断しやすくなります。こちらからのふわっとした相談を意思決定できる状態まで持っていってくれるので、助かっています。
川井さん:
片方だけでは成り立たなくて、お互いの領域を重ねながら補完し合うことで、上手く進められているのだと思います。
川井さん:
日本中の放送局のコンテンツが一つのプラットフォームに集まっているのは、TVerならではだと思います。広告を配信して終わりではなく、どの配信番組で広告が流れ、その結果どのような反応や効果があったのかまで見られるところに、独自のデータ活用の面白さがありますね。
牧さん:
私は、マーケットを作っている実感があることがいちばん面白いです。
動画広告市場は大きく伸びていますし、TVerの利用も広がっています。これまでブランドの認知を広げる手段としては、地上波テレビへの出稿が中心に考えられてきたと思いますが、今はTVerの視聴時間も増えていて、企業によるマーケティング活動においてTVerに広告を出す意味がどんどん大きくなっています。
そうした状況のなかで、TVerという日本を代表するメディアの広告プロダクトを内側から作ることができる。これまでテレビCMへの出稿が難しかった企業がTVerを入口に動画広告を始めるケースも生まれていて、そういう新しいプレイヤーが市場に入ってくる瞬間に立ち会えるし、それを可能にする広告商品を自分たちで作れる。
広告主にとっても放送局にとっても、ユーザーにとってもいい循環を生み出せることが、この仕事の魅力だと思います。
川井さん:
データチームとしては、広告を出す前に「どれくらいの人に届きそうか」を予測する精度をもっと高めていきたいです。
現在も過去の配信データをもとに予測値を出していますが、実際に広告が配信されるのは未来なので、過去の傾向だけでは見えない部分もあります。季節や時間帯などの要素も取り入れながら、実際の配信結果により近い数字を予測できるようにしていきたいです。
さらに先の話としては、TVerとテレビ放送を合わせた価値もデータで示せるようにしたいです。たとえば、テレビCMとTVerの広告を組み合わせたときに、全体でどれくらいの人に届くのか。それを予測できるようになれば、広告主に対して「テレビとTVerをどう組み合わせると効果的か」まで提案できるようになると考えています。
牧さん:
今は、TVerに広告を出すためにこの広告配信システムを使っていただいている面もあると思います。だからこそ今後は、広告代理店や広告主の方々に「使いやすい」「運用しやすい」と感じてもらい、もっと活用してもらえるプロダクトにしていきたいです。
使いやすさの改善と並行して、これまでTVerに広告を出したことのない業種や企業にも届くような、新しい広告メニューの開発にも挑戦したいです。プロダクトを改善するだけでなく、プロダクトが新しいマーケットの入口になれると思っていて、そこに向けて動いていきたいです。
川井さん:
自分の仕事が事業の数字に直結する手応えを持てる一方で、その結果に対する責任もダイレクトに返ってくる。それを楽しめる方にとって、TVerはとてもいい環境なのではないでしょうか。
牧さん:
サービスとしても広告プロダクトとしても、TVerはまだまだ成長フェーズにあります。マーケットを作っていきたい、自分のアイデアを実現したいといった、会社の成長と一緒に自分自身も成長させていきたいという方にはすごく合うと思います。

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制作:bgrass 株式会社
取材・撮影・執筆:加藤智朗 / 編集:尾崎美幸