
私たちbgrassは、女性のためのITキャリア転職サービス「WAKE Career」を運営しています。
当社のビジョンは、『"なりたい"を解放する』。 ジェンダーギャップのあるIT業界で、女性・ITエンジニアがチャレンジを続け、自分の「なりたい」を解放することを応援しています。
このインタビューシリーズでは、女性・ITエンジニアとして現在ご活躍されている方に、現在に至るまでの失敗やバイアスからのしくじりなどをお聞きします。 読者の皆さんが、「こんなにすごい人でも、こんな葛藤があったんだ!」「こんなキャリアもあるのか、楽しそう!」と参考にできるような記事をお届けしています!
今回はシリーズ第32弾です。(過去記事バックナンバー #16以降, #1~#15)
今回インタビューをさせていただいたのは、 アーティスト・起業家としてご活躍中のスプツニ子!さんです。
エンジニアからアーティストへ、そして起業家へ――。
スプツニ子!さんのキャリアは、一般的な“成功の型”から大きく外れているように見えるかもしれません。
けれど、その選択の一つひとつには、「テクノロジーが特定の価値観だけでつくられていていいのか?」という問いが根底にあります。
アートで問いを可視化し、起業で社会実装する。
それは、技術や資本主義を批判するのではなく、「よりよく使う」ための姿勢。
どんなバックグラウンドの人にも、自分なりの「問い」を持っていい。そんなメッセージが詰まったキャリアです。
どうぞお楽しみください!
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高校までは日本で過ごし、1年飛び級をしてインペリアル・カレッジ・ロンドン(以下、ICL)に進学、数学とコンピューターサイエンスを複専攻して、卒業後は、約2年間フリーランスのエンジニアとしてロンドンで仕事をしていました。両親が数学研究者だったので、当時としては早い時期の幼少時から、家に研究用のコンピューターがあり、プログラミングで遊んでいました。
その後はロイヤル・カレッジ・オブ・アート(以下、RCA)に入学し、スぺキュラティブ・デザインを学びました。スぺキュラティブ・デザインとは、課題について考えるきっかけを与え、「問い」を創造するデザインのことです。在学中より、テクノロジーやジェンダーを反映させた作品制作を行い、音楽活動もしていました。
そして2010年にRCAの卒業制作として手掛けた、「生理マシーン。タカシの場合。」がネットで話題になり、東京都現代美術館やニューヨーク近代美術館で展示をするようになって、本格的にアーティストの道を歩み始めました。

2013年からはボストンに拠点を移し、マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)メディアラボで助教になり、デザイン・フィクションという研究室を立ち上げました。
そして2017年に東京に拠点を移し、日本では、東京大学生産技術研究所や東京藝術大学で准教授を務め、2019年には株式会社Cradleを創業。Cradleでは、法人向けの従業員のウェルビーイング支援を行っており、現在は日本を代表する75社以上の企業にサービスを導入いただいています。
また、アーティストとしては今ちょうど、横浜美術館で「生理マシーン。タカシの場合。」が展示されていて、2025年は、マドリード、ドイツ、イスタンブールなどで展覧会が予定されています。
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私の母はイギリス人で、フルタイムで働く数学の教授でした。1985年生まれの私が小さい頃の日本では、TVをつけると女性が性的に扱われていたり、母親は専業主婦というのが主流。フルタイムで働く母は、「女性はみんな家庭に入るものだという価値観は間違っている。あなたにはあなたの人生があり、選択肢があるから、勉強をして能力をつけ、自分がやりたいことをやりなさい。」と言ってくれていました。父もキャリアを持つ女性を尊重しており、世の中と自分の家庭とのズレに気づき、日本の女性の選択肢が狭められていることに、違和感を感じていました。
さらに中学生の頃から生理痛がひどくて、女性であることによる身体的な不利益も感じていました。日本で専門機関に相談しても生理痛は解消されず、その後ICLに進学しロンドンで暮らし始めると、無料で病院でピルを処方されたんですね。ピルを飲むと生理痛が軽くなり、日本でこの情報にアクセスできなかったことに驚きを感じ、色々調べていくと、日本でのピルの承認までのプロセスに、ピルに対する偏見と決定する組織に偏りがあることがわかりました。
キャリアを積むにあたって、身体のウェルビーイングを整えることは大切なはずなのに、女性は特有の生理や更年期があるにも関わらず、そこをケアする方法が社会で知られていない。その点に、課題を感じるようになりました。
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ロンドンからボストンを経て、2017年に東京に帰国した際は、この世界でも有数の大都市が、ジェンダーギャップの観点で大きく遅れている点に驚きました。世界経済フォーラムが毎年発表している、世界におけるジェンダー格差指数いわゆるジェンダーギャップ指数でも、日本は146カ国中118位(2024年指標)と低水準です。
引用:Global Gender Gap Report 2024
TVやワイドショーで流れるニュースを見ても、無意識のジェンダーバイアスが根強く残っているのを感じました。
大学の医学部の合否において、女性の受験者が減点されていたことが2018年に発覚したのを覚えていますか?肌感として、約30年分は、アメリカやヨーロッパから遅れている感覚があります。今でいうとアメリカ・ヨーロッパの1990年代前半くらいですね。

とはいえ、フェムテック分野の認知が進んだり、「ジェンダードイノベーション」という言葉が広まるなど、少しずつ変化の兆しも見えています。
私自身もこの分野で日本で起業することを決めて、2019年に株式会社Cradleを創業しました。
そうですね、実は私は、ICL卒業時には資本主義的な考えが大嫌いだったんです(笑)。
数学科だったこともあり、ICLの同級生は超一流の金融企業に就職していくのですが、私は最優等学位で卒業したくせに就職活動を一切しませんでした。周囲や家族には、「何をやっているんだ...?」と言われていましたね(笑)。
大学卒業後は、アーティストになるためRCAに進学したい旨を両親に伝えたところ、大反対をされましたが、元々好きなエンジニアリングで学費を貯めて、大学院に進学しました。
アメリカにいた時に徐々に変化していきました。周りにいる方の影響が大きかったですね。アメリカにいる起業家や大学研究者の友人達は、資本主義には魂は売らなくても、うまく仕組みを理解してハックしていく考えを持っていたんです。イギリスのデザインスクールとは、良くも悪くもカルチャーが全く違いました。
その様子を見ていて、資本主義は、ビジョンを実現するための単なるツールや手段なのかもしれないと思い始めました。それと同時に、社会を良くしたいというビジョンを持っている人ほど、資本主義を嫌う傾向にあるのは悲劇だと感じるようにもなりました。資本主義の世界が、お金だけが大好きなモラルのない人で集まるのは、世の中が良くならないじゃないですか。そこに一石を投じる意味でも、世の中を大きく動かすツールが資本主義で、そのツールは良い方にも使えるはず、と冷静に考えられるようになったんです。

仲が良い女性起業家に勧められたことも大きなきっかけですね。そもそも女性は、社会的背景の影響からテクノロジーや資本主義を避けがちだと感じますが、女性の視点がもっと企業やテクノロジーの世界に入ったら、世の中はもっともっと面白くなると思っています。
なぜ避けがちかという観点で、女性は、男性よりも自信を持ちにくいというデータがあります。例えば、男性は転職や昇進するために必要なスキルの6割しか満たしていなくても、積極的に応募する。一方女性は、スキルの100%以上を満たしていないと応募しないとも言われています。
私自身も、MITから日本に帰国する時、「仕事がなかったらどうしよう...」とか、「自分には本当は能力はないのかも...」と急に自信がなくなってしまった過去があります。今振り返ると、当時はインポスター症候群にかかっていましたね。
みなさんも自信を失った時、「女性は自信を失いやすい」というデータを思い返してください。本来の能力より過小評価している自分に気付き、ぜひ、「3倍か5倍ぐらいの能力評価でちょうどいい」と考えてみると良いと思います。
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Cradleのプロダクトを、もっともっと広げていきたいと考えています。私にとってのスタートアップ起業は、アーティストとしての作品のひとつという認識でいます。
資本主義にはどっぷりは浸からないですが、きちんとお金が入ることで、女性やマイノリティの方の支援もできると思っています。

私が若い頃にキャリアを選択していた時、「自由で実力主義なこと」「スキル的に食いっぱぐれない」ことを重視していました(笑)。食いっぱぐれないからこそ、好きなこともできたりしますからね。そういった意味で、エンジニアという職業は最高の職業!!素晴らしい選択をしていることに、自信を持ってください。
そして「人と同じ」であることに安心感を覚える人がいますが、それは勿体ないと個人的に思っています。自分の特殊性を活かして、ぜひ「オンリーワン」の存在になっていただけたらなと思います。その時に、自分の「好き」も混ざっていることも大事ですね。私自身、今もエンジニアリングは好きで、Cradleで生成AIを使ったシステムを作ったりしています。
そして最後に大事なこと。
仕事は、お金を稼ぐためのものだけではないので、自分の理想のライフスタイルをきちんと考え、時には過剰なオーバーワークになどならないよう「No!」を言えるスキルも培ってください。
ホルモンでメンタルを安定させ、瞑想と運動習慣を取り入れています。ミレーナなど生理をコントロールできたりするフェムテックの情報など色々な選択肢があるので、自分に合ったものを見つけ出すのがオススメですよ。また、Notionで習慣トラッカ―をつけているので、その日終わらせたことはチェックをつけています!
WAKE Career は、女性のためのITキャリア転職サービスです。 自分が選んだキャリアを諦めたくない、新しい道を見つけたい方のご連絡をお待ちしています。 あなた自身が主役となる仕事の舞台を、一緒に探しましょう!
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取材・執筆:くぼちゃん