したたかに、しなやかに。面白そうだったらやってみる~みんなの居場所をつくるマネージャーへの軌跡~|のーりーさん(富士通株式会社)インタビュー
#女性エンジニアインタビュー
私たちbgrassは、女性のためのITキャリア転職サービス「WAKE Career」を運営しています。
当社のビジョンは、『"なりたい"を解放する』。 ジェンダーギャップのあるIT業界で、女性・ITエンジニアがチャレンジを続け、自分の「なりたい」を解放することを応援しています。
このインタビューシリーズでは、女性・ITエンジニアとして現在ご活躍されている方に、現在に至るまでの失敗やバイアスからのしくじりなどをお聞きします。 読者の皆さんが、「こんなにすごい人でも、こんな葛藤があったんだ!」「こんなキャリアもあるのか、楽しそう!」と参考にできるような記事をお届けしています!
今回はシリーズ第35弾です。(過去記事バックナンバー #16以降, #1~#15)
今回インタビューをさせていただいたのは、富士通株式会社で特定アカウントユニット(自動車)チームリーダーとしてご活躍中の、のーりーさんです。
チームリーダーになったのに、思うように成果を出せない。
「対等でいたい」と気負うほど、苦しくなる――。
のーりーさんが初めてリーダーを任された時、相手チームのベテランと自分を比べては、深夜まで働き続ける日々が続いていました。
しかし、そんな極限の時期を支えてくれたのは、チームメンバーの一言でした。
「できることしかできない」
そう割り切れるようになった時、肩の力が抜け、チームにも笑顔が戻っていきます。
立場が人を育て、チームで成果を出す経験を経て、
今では「したたかに、しなやかに」キャリアを歩むマネージャーとして活躍中。
のーりーさんの姿からは、働く女性たちへの確かなエールが感じられます。
「対等でいたい」と気負い過ぎていた、チームリーダー時代
ーーこれまでのキャリアと現在のお仕事について教えてください。
大学卒業後、大手SIerに15年勤務し、製造業向けに基幹システムの企画・開発・運用保守を担当してきました。大学時代からJavaを学習しており、入社当時はJavaを中心としたプログラミングを経験、その後はシステムライフサイクル全体を俯瞰したプロジェクトマネジメントや、アカウントマネジメントを担いました。
そして子育てを機に、働き方の自由度を優先して化学メーカーの社内SEに転職しました。そこではDX推進を担当し、社内システムの刷新を主導するほか、AIや生成AI、市民開発などの導入検討や、社内定着化に向けた教育などを企画・実施してきました。
現在は3社目となる富士通で、プロジェクトリーダーとして、自動車メーカー向けのアプリ基盤保守やミドルウェアのアップグレードを担当しています。
ーーキャリアを振り返り、葛藤やモヤモヤがあった時期はありますか?
1社目で初めてチームリーダーになった時が、一番モヤモヤした時期でした。
2つのチームがあり、もう片方のチームリーダーがベテランかつ、際限なく仕事をする方だったんです。スキルも経験も相手の方が圧倒的に上でありながら、仕事時間も長い。何をどう頑張っても勝てない状況なのに、同じチームリーダーとして「対等でいたい」と必死になって葛藤していましたね。深夜2時まで仕事をして、土日もなく、少しでも通勤時間を減らすため職場の近くに引っ越しまでしました...。
それに、それぞれ独立したチームにも関わらず、自分のチームが相手チームを支援する構図になってしまって。役割分担もうまくいかず、チームメンバーにも申し訳ない...という思いで毎日を過ごしていました。
今思うと、勝ち負けにこだわらなくても良かったのですが、当時はきっと気負い過ぎていたんだと思います。
できることしかできない。いい意味での割り切りが大切
ーーそんな時期は、どうやって乗り越えたのでしょうか?

チームメンバーに助けられて、何とか乗り越えました。
付箋にタスクを書き出し机の上に貼っていたのですが、ある日出社したら「落ち着いて、大丈夫」と書いた付箋がその上に貼ってあったり、ベテランの方たちが話を聞いてくれたりと、人に助けられてなんとかやりきれたという感じですね。
当時の経験から、「できることしかできない」といい意味で割り切ること、そして「後悔しないぐらいやりきる」ことの大切さを学びました。
「私はもっとできるはず」というのは、自分を過大評価しているんだと思っていて。やれることをやりきって失敗したら、仕方ない。そう思えるぐらいやりきればいいと気づきました。
ーーその後、マネージャーになられたんですよね。
そうですね。当時のマネージャーに、「実績はないけどスキルはあると思う」と声をかけてもらって。評価の要因は、昔から「みんなの居場所をつくる」ことを軸にしているからだと自己分析しています。
私は、1+1を3というより、4人で5を目指したいんですよね。適材適所で、必ず役割をつくる。みんなのいいところをちょっとずつプラスすると、少しだけ母数が増えるという働き方を目指しています。
そして実は、この想いには新人時代の原体験があります。最初に配属された現場が忙しすぎて、自分の居場所がなかったんです。作ったプログラムが、翌朝には全部書き換えられていたり。指示されたことをやっても「それは違う」と怒られるけれど、どうすれば良いかまでは教えてもらえなかったり。当時は、「あの子はすぐ辞める」と噂されていたようです(笑)。
だからこそ、後から入ってくる人には、私のような理不尽な思いはさせたくないという気持ちから、「○○システムの歩き方」というドキュメントを作るなどサポートを充実させ、早く環境に馴染めるよう工夫しました。
立場が人を育てる。チームビルディングの経験が、今のキャリアを形作る
ーー新任マネージャーとして、どんなお仕事を担当されたのでしょうか?
顧客満足度が低い開発プロジェクトの運用保守・保守改善を担当しました。開発段階でユーザーとの調整が不十分だったところがあり、仕様通りには作ったけれど業務では使いにくいものができあがっていたんです。ユーザー側の方に、「お前らの会社も地に落ちたな」とまで言われるような状況からのスタートでした。
ただ、問題点が明確だった分同じ轍を踏まないようにしようと、当たり前のことを丁寧に実施し、顧客からの信頼回復につとめました。エンドユーザーも交えた打ち合わせを提案したり、顧客にとって本当に必要な機能なのかどうか、業務が回るのかどうかを、優先順位をつけて精度高く作っていきました。その結果、チームビルディングもうまくいき、チーム全体の底上げもできましたね。
その中で、プロジェクトリーダーをやっていた後輩の成長も目の当たりにしました。比較的おとなしい後輩だったのですが、まさに「立場が人を育てる」ことを肌で実感しましたね。この時の成功体験は、その後教育やマネジメントに力を入れるきっかけになりました。
ーーマネージャーになってみて、視点や価値観に変化はありましたか?

自社の利益について考えるという意味が分かるようになりました。
若手の頃、「自社:お客様=6:4で考えろ」と言われたことがあったのですが、当時はお客様至上主義で、お客様が喜んでくれることが100%だと思っており、言われた意味がよく分からなかったんです。それがマネージャーになって、会社として発展するにはきちんと利益を得ることが必要であり、お客様に対してそれだけの価値を出すことが大切なんだと気づきました。
それに、会社の上層部など巻き込める人が増えることにも気づきましたね。それまでは、プロジェクトマネージャーがピラミッドの頂点だと思っていて、自分がマネージャーになった当初は全部自分が決めなくてはと思っていたんです。でも視点を広げると、その上には会社の上層部がいて、横にも斜めにも巻き込める人がいるんだと。色んな人を巻き込んだら、良い仕事に繋がると考えるようになりました。
したたかに、しなやかに。面白そうだと思ったらやってみる
ーー今後の展望を教えてください。
まず、今後のキャリアもマネージャー路線を考えています。私は、基本的に1人では何もできないと思っているし、何よりチームで働くことが好きなんです。それに上に行けばいくほど、自分の裁量で好きなことができると思っています。好きなことをするためには、それなりの裁量もあった方がスムーズですよね。だから、出世をして自分で動かせることを増やし、さらに好きなことができたら良いなと思っています。
あと、息子の小学校のタブレットが富士通製なんです。転職を伝えた時、「僕のタブレットと一緒だ!」とすごく喜んでくれて、嬉しかったんですよね。だからこそ、子どもを通じた未来を考えながら、世の中に影響を与えていきたいと思っています。

ーーのーりーさんが、働くうえで大事にしていることは何でしょうか?
「面白そうだと思ったらやってみる」ことですね。
実は私も、子どもが生まれてからは、どこかキャリアを諦めていた時期があるんです。でもそんな時に、ある女性取締役の方に「チャンスと思ったら、それがチャンス」「子供がいることを知っていて任命されたのなら、ある意味それは任命責任でもあり、面白がってしまえばいい」という言葉をかけてもらったことがあって。自分一人で背負いこまず、良い意味で任命した方の責任だと思えばいい、と考えると、面白がる余裕が出てくる気がしています。
(※「子どもがいる」「ママである」といった属性は、本来キャリア選択の制約ではなく、個人の経験や価値観の一部です。WAKE Careerでは、ライフステージや家庭環境に関わらず、ひとりひとりが“自分の可能性を諦めない”ための支援を行っています。子育てとキャリアを両立することを特別視するのではなく、個人の意志と周囲の環境が共にアップデートされていく過程そのものを応援しています。)
だから富士通にも転職しました。前職の社内SEより忙しくなるかもしれないけれど、「面白そう」というワクワクを選択したんです。加えて、事前の面談から親身にキャリアについて検討してもらえ、今までで一番長期的なキャリアが見込めると感じたのも転職のきっかけになりました。
ーー実際にご転職され、いかがですか?
まず、フルリモートで働ける自由度がすごく働きやすいです。
そして、風通しも良くて。入社した最初は前職と比較したりして、何かしらのギャップが出てくると思いますが、そういうときに思ったことや改善点が言いやすい雰囲気なんです。今までの自分たちのやり方に絶対合わせてという感じではなく、「確かにそういう考え方もあるね」と受け入れてもらえますし、すぐ動いてくれます。
ちなみに、この「のーりー」という名前も、今の職場のニックネーム制度で呼ばれているあだ名です(笑)。
ーー働く女性エンジニアの方へメッセージをお願いします。
私は、「したたかに、しなやかに」という言葉を大事にしています。
これも前述の女性取締役の方の言葉なのですが、女性とか男性とか関係なく、誰かと同じ土俵に立つ必要なんてない。私の場合は、出世も狙うしたたかさも持ちつつ、細かなことにも気づけるようなしなやかさも持ち合わせていきたいと考えています。そんなふうに、その人の個性を活かした仕事のやり方でやっていけばいい、と思います。
それに、働き方はさまざまです。マネージャーになることが正しいわけでもありません。社会にいると、どうしても「頑張らなくちゃ」と思いがちですが、全然そんなことはない。その人なりの働き方が一番なので、自分に合った働き方を見つけてくださいね。
私のエンパワーメントルーティン
ーーのーりーさんの日々のエンパワーメントルーティンを教えてください。
息子に毎日「大好きだよ」と伝えることです。今しかない大切な時間だと思って、毎日続けています。

富士通株式会社では仲間を募集中!
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取材・執筆:くぼちゃん

