
中堅エンジニアとして、任される仕事の幅が広がり、後輩指導や他部門との調整など「役割が増えた」にも関わらず、なぜか「成長している実感がない」、そして「正当に評価されていない」と感じていませんか?
それは、あなたが「プレイヤー型成長」の限界に達し、次のステージである「影響力型成長」への移行期にいるサインです。
本記事では、中堅エンジニアが陥りやすいキャリア停滞の構造を分析し、「成果が見えにくい非技術的な貢献」をいかに言語化し、評価される技術力と裁量に変えていくか、具体的な実践プロセスを解説します。この「視座転換の時期」を乗り越え、納得感のあるキャリアを掴みましょう。
中堅エンジニアが成長実感を得られない最大の原因は、「増えた役割」に対する組織の評価基準が曖昧なことです。
プレイヤー時代の成長は、特定の技術を深く掘り下げる「T字の縦軸」の成長でした。中堅層の成長は、その深い技術知見を活かして、「技術」と「ビジネス」「新人」と「ベテラン」の間を繋ぐ「架け橋(ブリッジ)」となる能力です。
この「ブリッジ能力」こそが、新しい役割に見合う評価の軸となります。
成長実感がない状態を「キャリア停滞」だと悲観する必要はありません。それは、高次のスキル(調整力、言語化能力、影響力)を身につけるための「視座転換の時期」です。ここでの取り組み次第で、あなたは技術専門家としての道に進むことも、マネージャーとしての道に進むことも可能になります。
なぜ中堅層は、頑張っているのに報われないと感じやすいのでしょうか。
リーダー的な役割を任され始めると、評価の基準が急に「チームへの影響力」に移ります。しかし、影響力は計測が難しく、これまでの「目の前の成果」で評価されていた感覚とのギャップに苦しみます。
中堅になると、以下のような「見えない貢献」の比重が急増します。
これらは組織にとって不可欠ですが、技術力指標で評価されにくく、「雑務が増えただけ」と感じてしまいます。
「あの人ならできるだろう」と、様々な部署から緊急性の高い細かなタスクや、調整業務が集中しがちです。その結果、本来時間をかけるべきコアな技術力の深化のための時間が削られ、「自分の強みが何か」を見失い、「何でも屋」だと自認してしまうのです。
曖昧な役割を具体的な成果に変え、評価と成長のサイクルを取り戻すためのプロセスです。
まずは、自分の貢献を評価者が理解できる言葉に変換します。
あなたが「ドキュメント作成」という雑務だと感じている役割も、「ナレッジの形式知化」という立派な貢献です。

「技術力が追い付かない」と感じているなら、まずは「何に取り組むべきか」の決定権、すなわち裁量を自ら取りに行きましょう。
技術的負債の解消は、短期的な利益に繋がりにくいため、裁量を得るのが難しい分野です。ここで重要になるのが、技術的な正しさをビジネスの数値に変換することです。
「この古いライブラリを使い続けると、年間X回の障害リスクがあり、1回あたりの対応コストがY万円かかる。先行投資としてZ工数を投入すれば、未来のコストをN万円削減できる。」と提案しましょう。
この提案がどれほどお得かを示すのが「投資対効果(ROI)」です。
これは、投入した費用に対して、どれだけの見返り(利益や削減額)があるかを測るものです。投資対効果の計算は、このように誰にでもわかるように説明できます。
投資対効果 = (将来的に)節約できるお金 / (今)解消にかかるお金
この計算結果、たとえば「投資した費用の2倍のお金を将来節約できる」といった大きな数字を提示できれば、あなたは技術的な選択を論理的な根拠に基づいて行えるようになります。
中堅層の成長のボトルネックは、単なる「業務量の増加」ではなく、「学習の質の停滞」にあることが多いです。
キャリアを停滞させないためには、学習時間の8割を既存のコア技術の深化に使い、残りの2割を新規領域(例:AI、セキュリティ)への探索に投資する8:2の法則を意識しましょう。
「深く掘る8割」であなたの専門性を担保し、「広く探る2割」で未来への不安を解消します。
中堅層は技術力が高いため、「自分でやった方が早い」と、ついメンバーの作業に口を出したり、自分で解決してしまったりしがちです(マイクロマネジメント)。
しかし、あなたが全てを解決してしまうと、チーム全体の成長機会を奪い、結果的にあなたの「影響力型成長」の機会も失われます。「教える」「委譲する」ための時間を確保することが、あなたの最も重要な成長投資です。
昇進・昇格の評価基準は、コードの量や質といった技術力だけでなく、チーム・組織への貢献度(リーダーシップ、育成、文化形成)が非常に大きな割合を占めます。
役職が上がるほど、評価の焦点は「個人の技術スキル」から「チームや組織を通じて大きな成果を出す能力」へと変化します。多くの企業では、昇進後の役割に不可欠な他者への影響力や指導力が、技術力に劣らず、あるいはそれ以上に重視されます。
技術力に自信があっても評価されないのは、この「組織貢献」、すなわち「他者に与えた影響」や「組織の生産性を高めた仕組みづくり」といった項目が適切に言語化できていないためです。
Step 1で定義した「非技術的な貢献」とは、この組織的な影響力を指します。これを意識的に数値や具体的な成果としてアピールしましょう。
例: 「コードを改善した」ではなく、「技術標準を策定・共有し、チーム全体のレビュー時間を20%削減した」と表現する。
中堅層の成長課題は男女共通ですが、女性エンジニアは、評価の文脈において特有の課題に直面しやすく、これが成長実感の阻害要因になることがあります。
女性エンジニアは、コミュニケーションや共感性の高さから、チーム内の調整役、潤滑油、ドキュメントの整理といった「縁の下の力持ち」的な役割を任されやすい傾向があります。これは素晴らしい貢献ですが、往々にして技術評価の対象から外されがちです。
この役割を技術貢献に結びつけるために:
技術力に自信がある人ほど、自己アピールを苦手とし、「成果は上司が見てくれるはずだ」と考えがちです。しかし、成果の多くが「見えにくい貢献」になった今、「自己アピールの技術」は必須スキルです。
Q1:技術力をどうやって上司に「評価」してもらえばいいですか?
A:上司の期待値(評価基準)をまず確認し、それに合わせて成果を変換して報告します。上司が「生産性向上」を重視するなら、技術選定によって「開発リードタイムがどれだけ短縮されたか」というビジネス指標でアピールしましょう。
Q2:「新しい技術を学ぶ時間」を確保するための具体的な業務調整方法は?
A:増えた役割の中から、「自分以外でもできる業務」を見つけ、積極的に委任することを上司に提案します。また、「学習時間を技術的負債の解消」や「ナレッジ形式知化」の時間として、業務時間内に組み込む交渉をしましょう。
Q3:自分のキャリアを停滞させている原因が、今の職場環境にある場合の判断基準は?
A:「この環境で、私の5年後のキャリアの軸を達成できるか?」を判断基準にします。もし、あなたの「裁量獲得」の提案(Step 2)や「貢献の言語化」(Step 1)をしても、組織が評価基準を変える努力をしない場合、環境自体があなたの成長に適していない可能性を考慮すべきです。
中堅ITエンジニアのあなたが感じる「役割増加と成長実感のギャップ」は、次のステージへの移行に必要な試練です。
この課題を乗り越える鍵は、「見えない貢献」を言語化し、評価基準を自ら作り、裁量を勝ち取ることにあります。特に女性エンジニアの方は、非技術的な貢献を堂々とアピールする自己アピールの技術を磨きましょう。
この時期を有意義に過ごし、次のステージへの具体的な道筋を見つけるために、ぜひ一度、私たちとカジュアルにお話しませんか。
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