「現場はこなせるのに不安」器用貧乏ITエンジニアが得意を再定義する3ステップ
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現場の業務はこなせる。大きな問題もない。
でも、「これが本当にやりたいこと?」「このままで将来大丈夫?」という漠然とした不安に襲われることはありませんか?
実務経験を積んだITエンジニアほど、「器用貧乏」な状態に陥り、次に進むべき自分の軸(WILL)を見失いがちです。これは、能力の限界ではなく、キャリアのギアチェンジが必要なサインです。
本記事では、漠然とした「未来への不安」を抱えながらも「行動へのエネルギー」を生み出すための、エンジニアならではの自己分析プロセスを解説します。「好きなこと」探しではなく、「日常の違和感」を起点に、あなたのキャリアの軸を明確にし、変化に強いキャリアを築いていきましょう。
結論:「WILLがない」は悪くない。「違和感(Why)」を起点に軸を見つけよう
「WILLがない」状態は、「まだ軸が定まっていない」だけで、決して悪いことではありません。変化に対応するための「軸」を探し始める余裕がある証拠です。
「得意」の再定義:技術の深さではなく「日常の業務で無意識に改善していること」
「得意な技術」と聞くと、最新のフレームワークを深く使いこなすことだと思いがちですが、それは一部に過ぎません。真の「得意」とは、日常の業務の中で「なぜ、こんな非効率なことをしているんだろう?」と感じ、無意識に改善に着手してしまう領域です。
- 例: 誰もが嫌がるドキュメント整備を体系化してしまう → ナレッジマネジメントが得意な軸
- 例: 動作環境の違いによるバグにイライラし、CI/CD環境を勝手に整備してしまう → 開発プロセスの最適化が得意な軸
あなたの「違和感」や「イライラ」の裏に、成長の種が隠されています。
キャリアの軸は一本でなくて良い。常に探索し続ける姿勢が未来の不安を減らす
キャリアの軸は、一度見つけたら終わりというものではありません。技術の進化は早く、一つの技術が平均3~5年で陳腐化していく中で、軸も更新されていくのが自然です。
「軸」とは、目指すゴールではなく、「今、進むべき方向を判断するためのコンパス」です。常に周囲を探索し、コンパスの針を微調整し続ける姿勢が、未来への柔軟な対応を可能にします。
背景/現状|「現場はこなせるのに不安」を感じるITエンジニアの心理
なぜ現場業務をこなしている中堅エンジニアほど、不安を感じやすいのでしょうか。
原因1:日々のタスクが「点」になり、未来への繋がりが見えない
多くのエンジニアは、機能開発やバグ修正といった「目の前のタスク(点)」を完璧にこなします。しかし、自分の関わっているプロジェクトが「会社全体のどの戦略(線)に繋がっているのか」「自分の5年後のキャリア(面)にどう貢献するのか」が見えないと、作業の繰り返しに感じてしまいます。
原因2:市場のトレンドに振り回され、「自分の技術」に自信が持てない
新しい技術やトレンドが次々と登場するIT業界では、「あれもこれもやらなきゃ」と焦りがちです。SNSやニュースで見る華やかなトレンドに振り回され、自分の持つ確かなスキルが、市場の「変化」に取り残されてしまうのではないかという不安を抱えてしまいます。
【現場あるある】「器用貧乏」と自認してしまうエンジニアの構造的な悩み
「何でもできる」「どの現場でも重宝される」がゆえに、深く突き詰めたい技術があるのに、簡単な雑務や調整役ばかりを任されがちです。これにより、本質的な技術力の深化(T字の縦の線)がおろそかになり、「自分には突出した専門性がない」と器用貧乏だと自認してしまう構造的な課題があります。
【実践】漠然とした未来への不安を「具体的なWILL」に変える3ステップ
ここからは、あなたの「違和感」を具体的な行動軸に変えるための実践的なプロセスを紹介します。
Step 1:現在の業務から「違和感」と「手間」を徹底的に言語化する
自分の「WILL」は、「好きな技術」という大きな概念ではなく、「日常の中で解消したい小さな不満」から見つけ出します。
誤解されやすいポイント:「好きなこと」を探すのではなく「嫌なこと」を深掘りする
「好きなこと」は抽象的で、仕事に結びつきにくいもの。「嫌なこと」「手間だと感じる作業」を具体的に書き出し、「なぜそれが嫌なのか?」を問い続けると、あなたが価値を置いていること(=WILLの種)が見えてきます。
例: 「デプロイに30分かかるのが嫌だ」
- 深掘り: なぜ? → 待ち時間がもったいない。もっと早く市場に価値を提供したい。
- WILLの種: スピードと効率を追求する文化を作ることに価値を置いている。
Step 2:言語化した「違和感」を解消するための「技術要素」を紐づける
言語化した「違和感」を解決するために必要な技術的な知識やツールを結びつけます。
実務者目線での経験知:単なるツール導入で終わらせず、技術選定の判断軸まで深める
上記の例であれば、「デプロイに30分かかる」を解決するためにCI/CDツール(GitHub Actions, GitLab CIなど)を導入するだけでは、ただのツールユーザーで終わってしまいます。
一歩踏み込む: なぜこのツールが解決できるのか? 他のツールとの違いは? このツールを選んだことで、将来的な技術構成にどんな判断軸を持ち込めるか?
この「技術選定のWhy」に深くこだわることで、単なるスキルアップではなく、特定の領域で判断を任せられる「専門性」へと昇華します。
Step 3:「興味の種」を育て、「3ヶ月間の実験」として業務に落とし込む
「WILL」の種は、机上の空論ではなく、現場での成功体験を通して確信に変わります。
✨モチベーション獲得のための目標設定のコツ(小さく・具体的に)
発見した軸を、まず3ヶ月間で業務に組み込める「小さな実験」として実行します。
- 抽象的で続かない目標: 「CI/CDを完璧にする」
- 小さく具体的な目標: 「今週中にデプロイスクリプトを10分短縮するPoC(概念実証)を完了させる」
結果が出たら、それを社内で発表し、「自分が改善した」という成功体験を積み重ねましょう。この成功体験こそが、不確実な未来への対応力とあなたにとって最も強いモチベーションとなります。
専門家としての注意点:キャリアの軸探しで陥りがちな「落とし穴」
不安解消のために資格取得を目的化しないことの重要性
未来への不安から、手っ取り早く資格取得に走る方がいますが、資格はあくまで知識の証明です。資格取得が「WILLを達成するための手段」になっているか常に確認しましょう。資格が目的化してしまうと、現場での実務的な成長に繋がらず、不安に支配されたままになってしまいます。
客観的事実:「キャリアの軸」は一度決めたら終わりではない(平均3~5年で再定義が必要)
IT業界の技術サイクルは速く、テクノロジーの軸は一度見つけても陳腐化が進みます。専門家として、キャリアの軸は平均3~5年で市場価値に合わせて再定義が必要だと認識しておくべきです。変化に対応し、常に新しい「違和感」を探す「学習と探索の習慣」こそが、一生モノのキャリアの軸となります。
女性エンジニアのキャリア視点での補足知見
IT業界における女性エンジニアのキャリア形成は、男性とは異なる構造的な課題に直面することが少なくありません。これらを理解し、マインドセットを変えることが、不安解消に繋がります。
特有の課題:他者のキャリアパスやロールモデルが見えにくく、不安が増大しやすい文脈
IT技術職、特に上級職や専門職において、女性の比率はまだ低いのが現状です。これにより、自身のロールモデルとなる「女性の先輩エンジニア」の成功例や具体的なキャリアパスが、身近な範囲で見えにくいという課題があります。
結果: 「自分はどこまで成長できるのか」「この技術を突き詰めた未来に、自分の居場所はあるのか」という、未来の像が不鮮明なことによる不安が増大します。
対策: 業界カンファレンスや外部コミュニティに積極的に参加し、男女問わず多様なエンジニアのキャリアに触れましょう。身近にいなくても、「こういう生き方がある」と知るだけで、将来的なキャリアの選択肢が広がり、行動へのエネルギーを生みます。
多様なキャリアパスを受け入れる柔軟なマインドセット:「管理職」だけがゴールではない
多くの組織で、キャリアパスは「プレイヤー」から「管理職(マネージャー)」への一本道で描かれがちです。しかし、女性は、技術探求、チームビルディング、プロジェクト推進など、多様な領域に価値を見出しやすい傾向があります。
「管理職になりたくないから、WILLがない」と悩む必要はありません。
専門家としての多様な軸の例:
- テックリード: 技術的な深さと判断力でチームを引っ張る
- スペシャリスト: 特定の技術やドメイン知識を武器にする
- アジャイルコーチ/スクラムマスター: 開発プロセスとチームの働き方自体を改善する
「多様なキャリアパスを受け入れる柔軟なマインドセット」を持つことが、あなたの「WILL」を「管理職」という枠に閉じ込めず、真にやりたいことと結びつける鍵になります。
よくある質問(Q&A)
Q1:得意な技術が見つかるまで、今の仕事は手を抜いてもいいですか?
A:手を抜く必要はありませんが、「リソースの配分」を見直しましょう。既存の業務は効率化し、創出した時間(例:1日30分)を、Step 3で定めた「3ヶ月間の実験」に投資してください。現状維持の努力ではなく、未来に向けた投資に意識を集中させることが大切です。
Q2:「新しい技術を勉強する」モチベーションがない時の対処法は?
A:勉強の目的を「技術のキャッチアップ」から「現場の違和感を解消すること」に変えてください。技術を学ぶこと自体を目的とするのではなく、あなたのWILLを達成するための手段として捉え直すことで、モチベーションを獲得しましょう。
Q3:自分の興味が技術とは違う「マネジメント」や「ビジネス」に傾いたらどうすべき?
A:それは非常に価値ある「WILL」の発見です。技術的な知識を背景に持ちながらマネジメントやビジネスに携われるエンジニアは、市場価値が極めて高いです。技術者としてのキャリアに固執せず、「技術を手段として、何を実現したいか」を軸にキャリアを再設計しましょう。
まとめ
ITエンジニアのあなたが抱える「WILLがない」「未来が不安」という悩みは、決して立ち止まりではありません。それは、次のステージへと進化するための、中堅エンジニア共通の『キャリアの節目』です。
「違和感」を言語化し、「技術要素」に紐づける3ステップは、その漠然とした不安を具体的なモチベーションとキャリア軸に変えるための大切なプロセスです。
「自分の違和感を誰かに言語化を手伝ってほしい」といった状態でも大歓迎!
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